Vinetreeマガジン編集部(新入り)りょーこの ワイナリーに「はじめまして!」

~駒園ヴィンヤード~in塩山~ 後編

元・自動車メカニックが生み出すワイン

醸造施設内には様々なサイズ、素材のタンクがあります。

グッと広がるぶどうの香りから、ぶどう自身の凝縮されたパワーを感じました。ここで一つ疑問が。樽で熟成させるワインも多い駒園ヴィンヤード。しかし、テイスティングしたワインからは、美しいみずみずしさ感じました。

一体、どのように管理・醸造をしているのでしょうか。

「ぶどう畑の地下に存在する笛吹川の水脈が要因かもしれません」と近藤さん。

かつて暴れ川であった笛吹川。その影響で駒園の畑は、山地より運ばれた砂が、本土壌まで3メートルも堆積しています。つまりぶどうの根が本土壌まで辿りつくと水脈が。おそらく、ワインから感じるみずみずしいニュアンスは笛吹川の軟水ではないかとのこと。

また、新樽のオーク樽はそのままだと香りが強すぎてしまうので、ワインを仕込む前に水張りを行います。こうする事で、柔らかく喉や体に負担のないワインができあがるということなんです。

またもう一つの畑、駒園から離れた川窪という畑にはミントが自生しており、こちらのぶどうからはほんのりミントのニュアンスが。

科学的に証明されているわけではないとのことですが、海外ではオリーブと共生しているぶどうからつくられたワインには、少しオイルっぽいニュアンスが出てくると言話も。なにかあるのかもしれませんね。川久保の畑のブドウから生まれたワインは、ミントのニュアンスでさらに清々しい舌触りが出ているのかも。

駒園ヴィンヤードの世界に酔いしれる

大胆な挑戦をしながらも日本人ならではの優しさが感じられるワインを生み出す近藤さん。元々、自動車のメカニックをしていたそうです。国際レースのメカニカルオフィシャルまで務め、自動車業界でキャリアを重ねました。しかし、子供のころのお父様のお仕事での転勤の経験から地場産業に従事したいと決意し、ワイン醸造の世界へ。かれこれ24年近くワインづくりをしています。

自身のことを「ズボラ」と表現する近藤さんですが、自然との寄り添い方はとても繊細です。それと同時にポジティブなモノの捉え方もします。ワインづくりで最も面白いのは「想像ができても予測できないところ」と話します。

2015年まで草生栽培ではなかった駒園ヴィンヤード。剪定した枝をチップにして土に入れたり、鶏糞を利用したり。時間をかけて土の質をより自然に近い状態へ近づけました。近藤さんは何度も「人間に自然はコントロールできないんです」と話します。

自然やそこに住む微生物たちが今何を思っているのか、何を考えているのかを聞きたい。それは「自然をコントロールできない」と嘆くのではなく、「自然だからこそ面白い」と言っているようで。

そんな近藤さんのつくるワインは初心者でも親しみやすいフレンドリーさや、ボルドーブレンドのような複雑で深い味わいものまで多岐にわたります。それでも駒園ヴィンヤードのワインであると感じるのは、やはり近藤さんのワインづくりに対する深いこだわりがあるからでしょう。

日本女性のようなワイン

さまざまな表情を見せてくれる、駒園ヴィンヤードのワイン。一見キャラクターは全く違うように思えますが、芯の部分に繋がりを感じます。

「繊細なんだけど芯がしっかりしていて。優しさとチャーミングさ、キュートな感じ、可愛い感じも。でも決して強すぎることはない。僕が表現したいのは、日本人女性のようなワインです」と近藤さん。

そして「両親が同じでも兄弟・姉妹ってキャラクターが違うでしょ?」と続けます。同じ土地で収穫されたぶどうでも、ほんの僅かな環境の変化、ヴィンテージ毎に、キャラクターが変わるのがワイン。

近藤さんはそんな微妙な変化も飲む方に味わってもらいたいと考えているそうです。だから、酵母でキャラクターづくりをするのではなく、その年の土地、土地の味をそのまま瓶詰めしたワインづくりを行っています。

酵母もできるだけニュートラルなものを使用しています。そんなスタイルを貫いているため、契約農家さんにも細かい注文はしません。契約農家さんは畑のプロ。プロがつくるぶどうはその年の最高のもの。素材はいいものなんだから、と。

一見シンプルでわかりやすくワインづくりをしているように感じますが、実はものすごく険しい道を行く近藤さん。その柔和な笑顔の下には熱い思いが込められているのだと感じられたのでした。

駒園ヴィンヤードの世界感に酔いしれて、日本ワインを始めてみよう!

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ワイナリー名:駒園ヴィンヤード

住所:山梨県甲州市塩山藤木1937

電話:0553-33-3058

会社営業時間:10:00~16:00 

ショップ定休日:土日祝日

見学:ワイナリーへお問い合わせください。

HP:https://www.yamanashi-kankou.jp/kankou/specialty/n_6987.html

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【りょーこ プロフィール】

Vinetree株式会社 メディア担当

1990年生まれ・千葉県出身。食べ物、お酒をこよなく愛する。最初は海外のデイリーワインから始まり、まもなく日本ワインのとりこに。家飲みでは飽き足らず飲み歩く日々。最初から最後までハッピーな気分で飲みきれるワイン、悲しいことがあった時に付き合ってくれるワインたちが大好きです!